vol.34.富良野 森のアカゲラ
北海道中富良野町にある北星山は、JR中富良野駅から歩いて10分ほどのところにあります。
標高は300mほどで、山頂までは車で登ることも出来ます。
遊歩道も整備されているので、森の散歩を手軽に楽しめます。
四季折々の自然の豊かさや美しさに触れることができます。
3月下旬。
北星山の林道を歩いています。
早朝の澄んだ清々しい空気の中、たくさんの鳥の鳴き声が響いています。
鳥の声に交じって、
「コンコンコ~ン」
とリズミカルに木を打つ音が聞こえてきました。
音のする方を見ると、古い電柱にアカゲラがとまっています。
その下の方には、アカゲラのものでしょうか、小さな丸い巣穴もあります。
アカゲラはキツツキの仲間です。
木の幹をつついて、巣となる穴を開けたり、木の中の虫をエサに食べています。
キツツキの仲間は、「森の番人」とも呼ばれています。
松の木などが枯れてしまう原因となる害虫を、エサとして食べてくれるからです。
この害虫駆除のお陰で、森の木々が守られています。
アカゲラの生きるための行為が、森が生き続ける礎に繋がっています。
さきほど聞こえた、「コンコンコ~ン」という音は、アカゲラがくちばしで木を叩く音です。
これはアカゲラのドラミングで、繁殖のための求愛行動と言われています。
このアカゲラは、頭に赤い部分があるので、オスのアカゲラでしょう。
メスのアカゲラへの求愛のアピールが、朝の森に響き渡ります。
アカゲラが飛び立ったあと、とまっていた木に近づいてみました。
これは樹木ではなく、昭和42年に建てられた古い木製の電柱です。
電柱をよく見ると、穴がたくさんあいていました。
長い年月の間に、虫が巣食い、その虫を鳥が食べ、また、巣としても使われてきたのでしょう。
中を覗くと幹の部分の大半は空洞になっています。
幹の部分を叩いてみると、太鼓のように音が良く響きます。
アカゲラはドラミングの音が良く響くよう、中が空洞になっている木を選んでいたのでしょうか。
アカゲラの体長は20㎝ほど。
さほど大きくない体で、森中にこだまする音を響かせる知恵なのでしょう。
生きること、そして子孫を残す使命をひたむきに全うする姿は、美しくさえ感じます。
まもなく恋の季節の迎え、新たな命が誕生することでしょう。
また家族の増えたアカゲラに会いに来たいと思います。