vol.32富良野 森のエゾリス
3月下旬、早朝の北海道中富良野町にある北星山です。
春分を過ぎて、日の出も早くなりました。
JR中富良野駅の背後に位置する北星山からは、中富良野町の街並みを一望できます。
今日は大きな雲がかかっていますが、お天気の良い日には、雄大な十勝岳連峰の山並みを見ることが出来ます。
北星山の林道を歩いていると、頭の上の方で何かが動く気配がありました。
木々を往来するエゾリスです。
ふさふさの長いしっぽが特徴的です。
このしっぽが、木の上を俊敏に動く際に、平衡感覚を保つ役割をしているそうです。
木々の高い枝を上手につたって、木から木へと移動しています。
エゾリスが登ってきた木の根元を見ると、雪面に小さな足跡が残っていました。
秋の間に土に埋めたエサを掘り起こすために、出かけたのでしょうか。
雪の下に埋まってしまったエサも、上手に見つけ出せるそうです。
北海道の森や林に暮らすエゾリスは、冬眠をしないので、冬の間もその姿をみることができます。
しばらく歩くと、今度はどこからか「プツン、プツン」という音が聞こえてきました。
音のする方に目を凝らしてみると、松の木の枝で食事中のエゾリスを見つけました。
前あしで松ぼっくりを持って、かじりついています。
エゾリスは前あしの指が長いので、このように上手に物をつかむことができるそうです。
先ほどの「プツン、プツン」という音は、エゾリスが松ぼっくりの中にある種の部分を食べている音だったようです。
とても愛らしい姿です。
この時期のエゾリスは、耳のまわりの毛がフサフサとしていて、大きな耳を持っているように見えます。
これは冬の間に生える冬毛に覆われているためです。
あたたかくなってきたので、これから徐々に夏毛にかわっていくことでしょう。
冬眠をしないエゾリスは、食べ物が少なくなる冬の間に備えて、ドングリやクルミを土に埋めておく習性があります。
長い冬を越えるための大切な食糧を確保するための、大事な知恵です。
北星山のカラマツ林には、オニグルミの幼木があちらこちらに根をはり、スクスクと育っていました。
このオニグルミたちは、もしかしたら、エゾリスの忘れ物でしょうか。
エゾリスが冬に備えて、土の中に埋めたクルミが、そのまま春を迎え、芽を出し、育った木々なのかもしれません。
森に生きるエゾリスたちが森を育てる役割をしてくれています。
小さなエゾリスの大きな仕事です。
自然の中のささやかな行動が、大きな力へと循環していきます。
北星山に暮らすエゾリスの営みに心を寄せ、あたたかい気持ちになりました。